第二幕 二人

少しずつ服に雨が滲みていく…。
僕は少し寒がりで、Tシャツに薄手のジャケットを着ていた。
ズボンも、夏には少し熱いジーパン。
ダメージ加工がされていて、時折風も感じるが、やっぱり少し熱かった。
君は夏らしい白のミニスカート。
それに合わせて、大きめのリボンの付いた半袖シャツを着ていた。
ふんわりとしたスカートが、今では雨に濡れて、細い足に絡み付いている。
扇情的な光景だった。
その光景に、僕は居た堪れなくなって…。
咄嗟に思いついた質問をぶつけてみた。
「名前は…?」
君は少し笑って、
「アダム。」
とだけ、答えた。
僕にはそれが冗談なのか、判らなかった。
それでも何となく、本名な気がした。
けれど、名前なんて本当はどうでもよかったんだ。
「あなたは…?」
と聞き返した君に、僕は照れ笑いをしながら、
「イブ」
とだけ答えた。
それから僕達は当所もなく彷徨い歩き、小さな公園に辿り着いた。
小さなベンチの水を軽く掃い、並んで座った。
「寒くない?」
僕が聞くと君は、
「少し、寒いかな…。」
と、静かに答えた。
僕はジャケットを脱ぎ、君の肩にそっと羽織らせた。
君は歯痒そうに微笑み、
「ありがとう。」
と軽く頭を下げた。
「今、何歳?」
なるべく自然に、さり気なく聞いてみた。
「いくつに見える?」
冗談めかして君が言った。
僕にはさっぱり判らなかった。
仕方がないので、
「十八くらい?」
ときいてみると、君は
「内緒です。」
と、艶やかに微笑んで見せた。
「イブさんは?」
君はまるで、ゲームを楽しむような目をして聞いた。
僕は戸惑いを隠せぬまま、それでも平静を装って
「二十三。」
と答えた。
君は少し嬉しそうに、
「イブさんは、優しいですよね。何か可愛いし…。」
と、言うと悪戯っぽく笑った。
結局、僕は君について何も聞き出せなかった。



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